今週、日本中を騒がしたニュースのトップは、まぎれもなく皇族の結婚式だろう。だ
が、ぼくはこのオマールエビとかいう得体の知れないものを食すような式にはまったくといっていいほど興味がそそられなかった。大体、今週はそれどころでは
なかったのだ。なにしろ、あいつが日本にやってきたのだから。そう、あの人々を恐怖で支配したサダム・・・おっと。あまりに似てるもんだから間違えちゃっ
た。日本にやってきたのは自由主義世界の領主ブッシュ米大統領ですね。
とはいっても、ブッシュはウルトラマンの怪獣同様やたらと日本にやってくるので、訪日自体は別段珍しい事ではないが、今回の訪日は、ぼくにとって忘れら
れない思い出となった。信じられない事だろうが、ぼくは今回の訪日のお供を妄想の範囲内で許されたのだ。
こうして、彼が日本にいる間中ブッシュについてまわりその軌跡を後世に残すべく散文として綴った。今回は、それを皆さんのお目にかける事としよう。
実録!ブッシュ訪日記!
事の始まりは、けっこう前。合衆国大統領訪日省というぼくの頭の片隅にあるアメリカの国家機関から、ぼく宛に電話があった時から始まる。
その時、電話口の女はぼくにこう言った。「ミックスピザ。XLサイズ。チーズ大盛ね。」
普通の人にはピザの注文に聞こえるかも知れないが、ぼくは、これですべてを理解した。彼らは、ぼくにブッシュの同行取材をしてもらいたいのだ。そうに違い
ない。
ぼくは、二つ返事で了解の旨を伝え、相手が住所を言わんとする、まさにその時電話を切った。
それからというもの、ぼくはブッシュが来る日の事を考え続けた。昼も夜も、あくる日の昼も夜も、またあくる日の昼も夜も、新聞の集金の日も。毎日、夜も
眠らず彼の事を考え続けた。まさか恋・・・?
いや、そんなバカな!俺はストレートなはずだ!でも、彼の肉体ときたら・・・
そうして運命の日の朝を迎えた。
11月15日、通称良い囲碁の日。その日、ぼくは頭の中で大阪の伊丹空港に立ち、ブッシュ一行が現れるのを今か今かと待ちわびていた。ブッシュに会える
興奮を抑えきれずに意味もなく小躍り(曲は佐渡おけさ)をしながら。
12時間ほど待つと、1回の飛行でガボベルデ共和国民全員が1年間に使う量と同等程度の石油を消費してガボベルデ共和国民全員が生涯に歩く距離の合計と
同等の距離をガボベルデ共和国のおばちゃんが八百屋にイモを買いにいって帰ってくるのと同等の時間で移動する物体が着陸した。この物体の名は、エアフォー
スワン。そう、ハリソン・フォードとゲイリー・オールドマンが200年以上前に繰り広げた死闘に由来する名前を持つ、アメリカ大統領専用機だ。
ちなみに、テロ対策の関係上中を中を除く事はできなかったが、この物体には様々な機能がついていると予想される。ホワイトハウスと連絡するようのテレビ
会議室や、ジェットサラウンドシステム付ホームシアターセット。デジタルカメラにプレイステーションポータブル。そしてなによりうらやましい事にトイレは
ウォッシュレットだろう。
着陸してまもなく、物体のハッチが開き、一匹の見たこともない生き物が大統領夫人を伴って降りてきた。ぼくは、それを大統領のペット、もしくはアメリカ
に付き物の核実験用の実験動物だと信じて疑わず、それが皆に歓迎されるのを横目に大統領を探し続けた。しかし、ヘリコプターで京都に向かう時間になっても
大統領は現れず、テロ対策でコンテナにでも隠れて密かに入国したものと理解し、ヘリコプターに乗り込み京都へ向かった。
結論から言うとそのケダモノが大統領だったわけだが、それに気がついたのは、それから3時間以上も経過した後だった。そのケダモノが「京都って何州にあ
るの?」って言葉を発した所で、ようやく大統領だと気がついたのだ。ぼくは、それから軽く挨拶したが、ヘリコプターで犬用のジャーキーを与えたことがシャ
クに障ったらしく、口も聞いてくれなかった。あんなに美味しそうに食べてたのに。
ぼくが大統領に無視された丁度そのころ、ぼくの肉体部分は、京都市内をうろつきまわっていた。これは別に京美人をひっかけるためではなく、ブッシュを迎
える市内をこの目で見たかったからだ。
はたして、京都人はブッシュを歓迎するのか、それともお茶漬けを出すのか。それを知りたかったのだ。
だが、街にでるとそれどころではない事に気がついた。なんと市中いたるところに警官が立っているのだ。その数は推定で市内のハトを大きく上回り、ゴキブ
リの数くらいになったのではなかろうか。これは、世界で最も恨みを買ってる人間がテロリストに殺されないようにとの、日本側の配慮によるものらしい。
お陰で、日常生活を送る上で不可欠な行動がかなり制限されていた。市民憩いの場である御所は中に入れないどころか近づく事すら許されず年寄りの多くは
ジョギングができない。爆弾が仕掛けられないようにゴミ箱を撤去されたため鼻水で湿ったティッシュを3キロも持ち歩く破目になり、マンホールの封鎖で唯一
の娯楽である地下にもぐる事も許されなかった。
”大統領が来たくらいでなんでそこまでしなければならないのだ。”と思ったが、2.74センチ先に警官がいて、テロリストに間違えられたらややこしいから
口に出すのはやめた。言論の自由はあるといっても、あの場でそんな事を口に出すには、ミジンコほどの心臓しか持ち合わせないぼくのような人間には荷が重過
ぎる。こうしてぼくの肉体はおとなしく家に帰った。
この日の大統領一行は、、建設に数億という税金を投じたのにも一般人は中に入れない京都迎賓館に宿泊し、一般人には食べれない食事を食べ、一般人にはか
けられない毛布にくるまり、翌日の小泉首相との会談に備えた。
一方、小泉首相は祇園で遊んでる所を目撃されたらしいが、詳細は不明。京美人でもひっかけてたんでしょう。
次回に続く(間に合わなかったわけじゃないよ。)
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