有史以前の昔から、時計の鐘が12時を告げると魔法が解けるといわれているが、ぼく
は、12時の鐘がなると、まるで魔法がかかったかのように、ラジオの前に座る。そして、効果の不明確な省エネのために外しておいたコンセントを差込み、電
源のスイッチをひねる。そして、全神経を指先に集中し、慎重かつ大胆にダイアルをまわしてお目当てのチャンネルを探すのだ。
しばらく、ダイアルをいじっていると、東北地方のおばあちゃんの言葉以上に聞き取りづらい言葉でしゃべるDJたちの声と、ノイズ音と区別のつかない音楽
がやみ、突然、”Mrロンリー”のメロディーがスピーカーから流れ出す。この音楽は紛れもなくジェットストリーム。
渋いナレーションと優しい音楽が一日の疲れを癒してくれる、伝説の番組。この番組は、スポンサーJALの度重なる不祥事にもかかわらず、今日も快調に空の
旅を続けている。
(ここからは、伊武雅刀調でお読みください)
ジェットストリーム・・・ジェットストリーム・・・ジェットストリーム・・・
遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休めるとき、
遥か雲海の上を音も無く流れ去る気流は、
たゆみない宇宙の営みを告げています。
満天の星をいただく果てしない光の海を
豊かに流れゆく風に心を開けば、
きらめく星座の物語も聞こえてくる、
夜のしじまの何と饒舌なことでしょうか。
光と影の境に消えていった遥かな地平線も瞼に浮かんで参ります…
夜間飛行のお供をいたしますパイロットは、私伊武雅刀です。なお、私はまだ当社規定の離着陸訓練を終了していませんが、すでに5回ほど運転していますので
ご安心ください。
ジェットストリーム・・・JALがお送りいたします。
それでは、まもなく離陸いたします。安全のためシートベルトをおしめください。
管制官「おい!そこの日航機!離陸許可出してないぞ。勝手に飛び始めるな!ああ、行っちまったよ、ちくしょうめ!」
NYの街角では、今日も少年達がバスケットで遊んでいます。その、技術の高さはNBAも顔負け。何年かすれば、彼らの誰かをコートで見る日が来るので
しょうか。
ガチャガチャガチャ
乗客「食品用トレイ(金属製)が落ちてきたぞ!なんで、ちゃんと片付けておかねえんだ!危ないじゃないか!」
スペインの牛追い祭りは、その名のとおり、牛と追いかけっこをするお祭りです。闘牛といい牛追い祭りといいスペイン人は牛がすきなようです。しかし、誰
がいったいこんな特異な祭りを思いついたんでしょうか。
副操縦士「機長、大変です!急に機内の気圧が下がっています。非常に危険な状況です。」
乗客「く、苦しい・・・」
しょうがない。緊急着陸だ!
夜間飛行の、ジェット機の翼に点滅するランプも
遠ざかるにつれて次第に星の瞬きと
区別がつかなくなって参りました。
お送りしておりますこの音楽が、
美しく貴方の夢に溶け込んでゆきますように・・・
当機はまもなく着陸いたします。
管制官「おい!そこの日航機!その滑走路は閉鎖中だ!」
なんだって!?そんなこと言ってももう遅い・・・
バーン
なんてこった!タイヤが・・・タイヤが外れやがった!
ああ、なんて素晴らしい番組なんだ。ジェットストリーム。
2005.07.01
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