社会風刺ユーモアコラム〜ハブの卵〜

コラム☆裏切りのゲーム☆

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 新年の4日め。日本の海抜が、国民のお正月太りの重みで、2センチほど下がった頃。 暖冬のはずなのに寒さの厳しい東京の片隅で、新しい命が誕生した。

 しかし、この誕生はみなに歓迎されたわけではなかった。とりわけ、実の母親がこの誕生を恨んでいた。というのも、ほとんどレイプに近い形で妊娠した子 だったのだ。
当初、母親は生むのを嫌がっていた。しかし保守派の中絶反対のシュプレヒコールにおされて、結局生むことになったというわけだ。
 おまけに、その子の顔は、あろうことか父親そっくりだった。そのため、母はこの子を愛するどころか憎むようになる。おかげで彼は、この後メーテレの昼ド ラなみに悲惨な人生を送ることになるのだが、それはかなり後の話なので、ここでは多くふれない。

 さて、この新しい命には即座に名前がつけられた。その名も”改正独占禁止法”。この名前は母親の両親から一文字づつもらったものだった。「いい名前ね。 これなら、きっといい子に育つわよ。」名前を聞いたとき母の母は、母の嫌そうな顔とは対照的な笑顔で言った。「そうだな。きっと、談合を許さないような子 どもになると思うよ。」母の父も言った。結局、彼の予言は的中することとなる。

 この”改正独占禁止法”という法律は、従来の独占禁止法に筋肉増強剤を与えパワーアップさせたものである。(そのため国際オリンピック委員会は、尿検査 を行うよう勧告しているが、彼は無視を続けている)
 今回の改正でもっとも変わった点は、談合に対する姿勢が厳しくなったことである。ちなみに談合とは、競争で行われる入札の際に、いくつかの企業が、力を 合わせ、あらかじめ決めておいた企業に工事を受注させ、皆で甘い汁をすすりあうという、身の毛がよだつような行為のことである。(R-18指定)

A社社長「ああ、お前の汁うめえよ。ズズッ。」
B社専務「お前のこそ最高さ。ズズッ。」

閑話休題

 この談合をやめさせようとしてできたのが、今回の改正独禁法というわけなのだ。例えば、談合をしていた企業から徴収する課徴金を、談合で得た利益の6% から10%に増やしたり、違法行為を繰り返したりした場合課徴金を50%に増やしたりと、村祭り顔負けのアイデアが多数もりこまれた。しかし、今回の顔は これらではない。この新たな独禁法の最大の特色はリーニエンシーとよばれる課徴金減免制度だ。
 これは、談合をしていた企業が、談合をしていたことを申告するか、”私は談合をしていた〜談合だらけの12ヶ月〜”という暴露本を出版すれば、課徴金が 免除され、おまけに経営幹部も刑事責任に問われないというものである。
早い話が、仲間を裏切れば罰は与えません、というわけだ。

 談合しても申告すれば罰が免除されるわけだから、パッとみ企業に逃げ道を作っただけに見えるが、実はそうではない。この、免除が適用されるのは、一つの 談合事件につき、一番初めに申告した企業だけ。つまり、一緒に談合した企業より先に、申告しなければならないのだ。

 仲間を公正取引委員会に売らなければ、談合を暴露した勇気ある企業と讃えられ、談合で儲けた金をすべて懐に入れることができるというわけだ。
だが、もし他の企業にちょっとでも先を越されたら最後。その時は、勇気ある企業どころか、談合していたうえ、暴露する勇気もなかったハナクソ企業と呼ばれ ることになるのである。つまり、これは1秒を争う今世紀最大の裏切りレースなのである。

 そして、この壮大な予告編(総制作費1200円)で予告されたとおり、この法律が施行された1月4日に、企業間の間で、すさまじい競争が繰り広げられ た。


 ここは、阿久土井建設の本社ビル最上階社長室。時は、1月3日夜11時55分。お正月の夜中だというのに、ここには数人の幹部が出勤していた。頭のはげ かけた社長。頭のはげかけた副社長。頭のはげかけた専務。頭のはげかけたその他大勢。皆、FAXの前に立っており、その光景は、まるでスポットライトで FAXをライトアップしてるようだった。ちなみに、なぜ電話ではなくFAXかというと、同着を避けるため申請がFAXに限られているからだ。

「諸君、ご存知のようにわが社は危機に瀕している。」社長が口火をきった。「最近じゃ工事も受注できず会計も火の車、株主にも愛想をつかされかけてる。」
「そこで、先日、我々の多大なる努力と、他の企業への度重なるノーパンしゃぶしゃぶの末、橋の建設をやらせてもらえることになった。だが、あのいまいまし い義前建設が、我々の工事を談合だと公正取引委員会に申告するつもりでいる。もしそうなったら、我が社に課徴金を払うだけの余力は残されてない。行き着く 先は・・・倒産だ。」皆の間から、アーだのハーだの声が漏れる。
「そこで、我々はなんとしてでも、あの義前建設よりも先に公正取引委員会に申告しなければならない。そうすれば、課徴金は免除されるし、我々経営陣も罪に も問われない。お世話になった企業には悪いが、これのみが我が社に残された道なのだ。
「さて、諸君。我々は12時、つまり改正独禁法が施行されると同時にFAXを送信する。おそらく奴らも同じ事をするだろう。我々とやつら、どちらが早い か。神のみぞ知るだ。」社長の傍らには、紙の挿入されたFAXが送信ボタンを押されるのを今か今かと待っていた。
「さあ、もうすぐ12時だ・・・常務!カウントダウンを。」
「はい。10.9.8・・・2.1」
「今だ〜!!」ツバメのようなすばしこさで、社長が送信ボタンを押した。

「送れた・・・」専務が言った。「1番でしょうか・・・?」
社長室に重たい沈黙が流れた。その時、電話が鳴った。
「私が出る!」社長自ら受話器を握った。「はい!阿久土井建設です。」
「もしもし、公正取引委員会です。今、お宅からFAXが来たんですが・・・」
「1番ですか!?2番ですか!?」
「ああ、1番初めに届きましたよ。」
「よおしっ!1番だ!1番だ!」社長が、部屋内に告げると、部屋中から、歓声が沸きあがった。抱き合う役員。むせびなく会長。「イエ〜〜!」
「もしもし。確かにお宅が一番だったんですけど・・・FAX、反対向きでしたよ。無効ですから、もう一回送ってください。」

2006.01.13
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